提重(さげぢゆう)は前述の「綿摘み」と同じ意味で、提重箱に餅或は饅頭などを納れ、売り歩くを名として淫を売つたものである。「守貞漫稿」には何時代頃に起つたか未詳とあるが、安永三年版の「里の小手巻評」に「近年提重と称するは、持ち運びの手軽きより云ひ始め」とあるに徴すれば、既に安永頃にあつたことが明かで、寺院或は独身者の家を訪うて淫をひさいだものである。